…誰かに見られている気がする。
しかし、後ろを振り返っても誰も居ない。遠くの方で車の走行音が聞こえる。
それは、何メートルも先から目線を感じる時もあれば、背後を漂っているときもある。
じんわりと気配をまとわせている。
また、散歩中にも。すれ違う自転車の男性が、歩道を歩く私をチラリと見たような感覚がする。私は反射的に目線を落とす。自転車が通り過ぎ、ホッと息をつく。
これらはすべて錯覚だ。頭では理解している。私の色眼鏡が映し出す世界。
仕事を休んだ日。仕事で失敗した瞬間。お金を使いすぎたとき。よく眠れずイライラすしているとき、などなど。
ストレスが蓄積されると、暗い妄想に吸い込まれてしまう。
自分の意志の力では抜け出せない。しかし、気合いとか根性とか、見ないふりは通用しない。
ずっと被っているペルソナ。社会生活を円滑にするための鎧。
それらはいつしか脱げなくなり、重くて重くて仕方がない。
でも、これを着けていなければ、私は社会に適応する術を失ってしまう。
…兜くらいは外したい。